○○を導入したけどうまくいかない

研修を企画するときの部屋

その昔、

目標管理を導入したけどうまくいかない

コーチングを導入したけどうまくいかない

という声がよく上がっていました。最近で言えば、

1on1を導入したけどうまくいかない

もう少ししたら、

ジョブ型を導入したけどうまくいかない

という声が聞こえてくる気がします。

人材育成に携わって20数年経ちますが、企業の人事担当/研修担当の皆さんから、数えきれないほどの「導入したけどうまくいかない」話を聞いてきました。

実際のところ、人の思考や行動習慣を変えることは簡単ではないですよね。

組織文化などを含め、複雑な要因が絡み合っての「導入したけどうまくいかない」という状況でしょうから、万能な処方箋は示せませんが、まずここは確認しましょうよ、という点を今日はお話ししたいと思います。

*************

大前提として、何か新しい施策を導入しようとするとき、

1.流行っているからといって導入しないこと
2.他社でうまくいっているからといって導入しないこと
3.有名な○○社がやっているから/▲▲さんが言っているからといって導入しないこと

です。これらの理由から導入を決めてもほぼ確実にうまくいきませんね。

*************

そして、以下の3つのつながりを確認して、導入の是非、導入の仕方を考えてみるといいと思います。

1.戦略とのつながり
2.システムとのつながり
3.理念とのつながり

*************

1.戦略とのつながり

何のために人材育成をするのかを考えてみましょう。育成が目的ではないですよね。経営に資する人材を用意するために人材育成をするんですよね。

経営には必ず達成したい目的や目標がありますね。そして、それを達成するために、外部環境をにらみながら、手持ちの資源(人・モノ・お金)を見て、どこ(の部門)に・どんな資源を・どれだけ配分し・どのような活動をすれば良いかを考えますね。この資源配分が経営戦略・事業戦略になります。

そして、その戦略だけでなく、組織の目的や目標を従業員が理解・納得するように周囲徹底する必要があります。

どうでしょうか。皆さんの会社の従業員は、自社の掲げる目的(ビジョン、パーパス)や目標、戦略を言えますか?そして、それに共感していますか?

特に、管理職はどうですか?
状況1:目的や目標、戦略を意識していない(ので言えない)
状況2:目的や目標、戦略は知っているが、必要性を真に理解していない
状況3:目的や目標、戦略は理解しているが、共感していない

状況1~3の状態であれば、「目標管理」や「1on1」などのどのような施策を

導入してもうまくいかない

でしょうね。

従業員からみて、「1on1」のような手段が目的のように映ったり、単なるコミュニケーション施策と映ったりして、組織の目的や目標、戦略に紐づかないならわざわざやりませんよね、普通なら。

*************

2.システムとのつながり

仮に、従業員は組織の掲げる目的や目標、戦略への理解が十分あり、それらに共感しているとしても、戦略の遂行に物理的・心理的負担がかかるようでは思ったように事が進まなくなるでしょう。

よって、戦略遂行を促進したり、阻害要因を取り除いたりするような仕組みや仕掛けが必要です。それをシステムと呼んでいます。

例えば、戦略を遂行する上で、異なる部署間の物理的な距離をなくしたほうが良いなら、点在していたオフィスを1か所に統合するとか、従業員同士の情報連携をスムーズにするためにITシステムを構築するとか、期待行動をとらせるために特別ボーナスのようなインセンティブを用意するとか。

冒頭で示しました「目標管理」や「1on1」は、この ”システム” なはずですね。戦略を遂行するための手段なはず・・・。ところが、

*目標管理自体が目的化している
*1on1自体が目的化している
*従業員のモチベーションアップが目的になっている

そんな状況はありませんか?「1on1」や「コーチング」に至っては、

*VUCAの時代だから
*管理職が答えを持っている時代じゃないから

という理由だけで導入の説明をしている会社もあるんですよ、実際に。訳ワカメです・・・。

こんな状態では、

導入してもうまくいかない

でしょうね。

*************

3.理念とのつながり

人を何かに向けて動機づけるとき、その目的や意義を伝えることは重要ですね。

繰り返しになりますが、「目標管理」や「ジョブ型」などといった施策自体が目的ではありませんよね。上位に戦略があるはずなのです。戦略のさらに上位には組織の目的(理念)があります。最近パーパスと言われるものです。

それらを従業員に語ることで、組織の目的実現に向けて動機づける。とても重要なことなのですが、そこに「目標管理」や「ジョブ型」、「コーチング」、「1on1」といった施策がどう関連するかを考えてみることです。

*いやぁ、そもそも理念やパーパスなんて触れることがない
*マネジャー研修で経営理念に少し触れるくらいだ
*マネジャーが日常的なコミュニケーションで理念に触れる瞬間なんて想像したことがない

こんな状態では、何を

導入してもうまくいかない

でしょうね。

組織の目的(理念)に触れることは経営上で重要なことです。なにか新たな取組を考える際に、それが理念の浸透にどう関連づけられるのかを考えることです。

*************

今日は「導入してもうまくいかない」に関する話でした。

最近で言えば、「1on1」について「導入してもうまくいかない」という声が聞かれています。

部下の話をなんでも聞いてあげればOK。雑談しましょう!

なんて指示のもと導入している会社もあるようで・・・。

その施策は、組織の目的(理念)や目標、戦略とどう繋がっていますか。

参考図書:伊丹敬之・加護野忠男 著『経営学入門』日経BPマーケティング(2003年)

*************

兄弟ブログ:「ミドルマネジャーの部屋」もよろしくお願いします!(→ サイトへ