開示した人的資本情報が自社社員に与える影響

研修を企画するときの部屋

研修の効果に関して、

どうやって測るのか?

という疑問は、ずーっと話題になっています。

現時点で「これが回答です」と言うとすれば、この本の内容がそれにあたるのではないでしょうか。

この本には、タイトルとおりに「研修を評価するための考え方・手法」が書かれているのですが、その内容を実践すれば、例えば、

*研修部門が経営層に対して、その効果を説明するとき (翌年も予算を確保するために 等)
*研修会社がクライアントに対して、その効果を説明するとき (翌年も受注を得るために 等)
*研修部門内で研修の効果を振り返るとき
 (翌年も継続するか検討するために 等)

などの場面でとても役に立つと思います。

人材育成担当・研修担当としては、当然ながら、経営に資する研修を企画し、実施した結果を測定(評価)するわけですので、”いい結果” になるに越したことはないですね。

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”いい結果” とは、経営に資する行動変容のこと

”いい結果” について、もう少し詳しく触れます。

研修では、設定された目的・目標に向けて受講者の行動変容を促すことが多いのですが、行動変容は「一時的な」変容ではなく「継続的な」変容のことを指しています。

ということは、受講者の行動を狙い通りに継続的に変容させることができたら ”いい結果” ということです。ところが、この ”いい結果” を得るのがなかなか難しいのです。

研修時に ”目から鱗” で、「よし、現場でやってみよう!」と思った内容でも、現場に戻ると・・・

*日常に追われ、実践する間もなく、学んだことの記憶が薄れる
*実践したものの、うまくいかず、「やっぱり現実は違う」とあきらめてしまう

*実践してみると疑問が湧いてきたのだが、聞ける相手がおらず、「まあいいか」とあきらめてしまう
*当面は実践していたが、ぎこちなさ/まどろっこしさを感じ、徐々に過去のやり方に戻してしまう

なんてことが多いのではないでしょうか。そうなると、行動変容なんて夢のまた夢。ということは、研修効果を測定(評価)したとしても、”いい結果” が得られる可能性はそんなに高くないのではないでしょうか。

学習意欲の高い人でさえ、上記のようなことが起こっている気がしますので、学習意欲の低い人は言わずもがな、ですね。

応援団長

研修後、数か月たって、行動変容の状況を測定することをちゃんとやったなら、研修部門にとって不都合な真実が明らかになるかもしれないなぁー

と私は思っています。

「研修の効果を測るって難しいですよね~」という、ゆるい共通理解というか、相互妥協というか、そんなものが研修関係者(※)の間にあるおかげ?で、”研修をやっても行動変容が見られない” という不都合な真実が浮き彫りになることなく、毎年同じように研修を実施しているのだという側面があるのではないでしょうか。

※ 関係者には、もちろん私も入っています。ほんと反省です。

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人的資本に関して可視化することの影響

今年から人的資本の情報開示が義務化となっています。企業は「価値向上」の観点と「リスクマネジメント」の観点から、ヒトに関する情報を開示せねばなりません。

「価値向上」の観点において、人材育成(研修は1つの手段)はとても大きな要素になります。

投資家や株主から良い評価・評判を得るために人的資本経営を目指しましょう!そして、人的資本情報を積極的に開示していきましょう!という風潮になっています。

私はこの動きは、対投資家と同じだけ、

応援団長

今いる従業員のエンゲージメントやコミットメントにも大きな影響を与える重要なもの

と思っています。

例えば、「うちの会社は、こんなにも人材に投資していますよ」という点をアピールするために、

*従業員の平均研修受講時間●●時間
*従業員一人当たりの研修費▲▲円

といった情報を開示したとします。

確かに時間とか費用はそれなりにかけている。でも、肝心な研修効果がないとしたら・・・・。

従業員は冷めませんかね?「うちの会社、外面はいいよね」と。

ほかにも、「毎年、次世代のリーダーシップ養成にこれだけ取り組んでいます!」なんて情報を開示しているにも関わらず、経営が不調であれば、従業員からすると「よく言うよ。うちの会社ってリーダー不在じゃないか」と思いませんかね。

研修を始めとする、人材育成に関する情報を外部に公開するって、対社外(投資家、株主など)だけでなく、対従業員のメッセージとしても相当にセンシティブなもの

だと思います。

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今日のまとめ

今日ここまで書いてきましたことをまとめますと、

① 研修後、本当に行動変容につながっている例は少ないということ
② 人的資本に関する情報を開示することが義務化になっているということ

この2点がかけ合わさると、従業員のエンゲージメントやモチベーションにとって良くない影響が起こり、結果として、採用力が低下したり、優秀人材が離職したり、イノベーションが起こらなかったりするのではないかと感じています。(心配しすぎかもしれませんけど)

どこの企業も競争環境の中で存在しています。そんな中で「人材こそ差別化のカギだ」ということで、人的資本経営の実践ということが言われていますので、人的資本を大切にする経営を企業文化にし、他社と差別化を図らねばなりませんね。

当たり前ですが、上記②の人的資本の可視化は不可避の流れですので、解決策は上記①にありますね。行動変容を促す施策を、これまで以上に練りに練って企画し実施することです。

これは、企業において「育成」に関わる業務の重要性が増す大きなチャンスですね!存在感を発揮するために、育成のプロとしてパフォーマンスを発揮していきましょう!