キャリア入社者へのその一言、本気ですか?

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国家としての成長・発展のために、岸田政権下では人材の流動化を推し進めていますね(→ 日本経済新聞社さんの記事へ)。

少し前に ”DX人材” という言葉が流行りましたが、多くの企業がデジタル人材を(内部で育成するのではなく)外部労働市場から獲得し、事業を創造したり、成長させたりするようなイノベーションを起こそうと躍起になっています。

優秀な人材を獲得するための要素として、お給料がそれなりに高くないといけませんので、人事制度を大きく変革している(しようとしている)企業も多いかと思います。

採用する側は、キャリア入社者の保有している経験や能力(知識・スキル)、人的ネットワークなどを期待して採用するのですが、それとは別な期待をぽろっと口にします。

入社時の研修などでキャリア入社者に対して、人事社員がこんな言葉を言っているのを聞いたことはありませんか?

皆さん(=キャリア入社者)の目から見て、うちの会社で「ここが変だ」と感じる部分をがあれば、どんどん指摘してほしい

いかがですか?

まず、こういった類の言葉は、キャリア入社者が当たり前の(キャリア入社者比率の高い)会社ではあまり出てこないと思います。つまり、こういったセリフが聞かれやすいのは、これまで新卒入社者中心でやってきた日系企業ではないでしょうか。

私は、上記したような「どんどん指摘してほしい」という言葉をむなしく聞いています。そのように思う理由は3つあります。

1.変だと感じた部分を指摘したとしても、在来社員はそれに慣れているので、積極的に変えようと思わないから
2.キャリア入社者は ”会社組織の経験者” だから
3.「変」の軸が明確でないから

これらの一つひとつについて、意見を述べたいと思います。

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1.
変だと感じた部分を指摘したとしても、在来社員はそれに慣れているので、積極的に変えようと思わないから

キャリア入社者が仕事を進めるうえで ”変な部分” を感じ、それを「変えませんか」と在来社員に提言したとしても、そのやり方を当たり前のこととしてやってきている人たちからすれば、そのやり方に慣れていますので、変えることに抵抗を感じるのが普通だと思います。

職場のキーパーソン(マネジャーなど)が積極的に支援してくれない限り、キャリア入社者のアイデアはなかなか採用されないでしょう。

もし、現場に対して影響力を有していない人事部門が、「現場で何かおかしいと感じたことがあったら声をあげてください」と言ったところで何が変わるのやら、と思ってしまいます。

反対に、現場への影響力が強い人事部門であったとしても、やり方がちょっとでも強権的であれば、現場の反発は必至でしょう。

人事部門として「変だと思うことがあれば、声をあげてほしい」というのであれば、誰に声をあげればよいのか(人事部門の誰に?現場のマネジャーに?)、その声を聴き取ったあと、どのように対応するつもりなのかまでを明言しないようなら、むなしい一言ではないでしょうか。

2.キャリア入社者は ”会社組織の経験者” だから

どこの会社でも入社時の研修において、

うちの会社では「・・・・・に貢献する」という理念を掲げています。

といったように、会社の理念をキャリア入社者に説明していると思います。

そんな中、キャリア入社者は頭の中でこう思います。

立派な理念だ。でも、現場にどれだけ浸透しているんだろうか? 掲げているだけなのでは?

と。

そうなのです。多くの皆さんがすでにお感じのように、残念ながら、世の中の多くの会社では理念が浸透していません(→ パーソル総合研究所の関連サイトへ)。

入社時の研修を担当する講師はきっと「うちの会社では理念がちゃんと浸透しています」と言い切れないのではないかと思います。(何を以て、”浸透している” というかは別議論とします)

では、キャリア入社者は以前にいた会社で「理念を意識した活動」や「理念を浸透させようとする活動」をやっていたのでしょうか。おそらく、多くの場合で「NO」だと思います。

現実として、多くの従業員は会社に対して「理念が浸透するといいのに~」と思っているわけでも、「理念が浸透していないのであれば、私が何とかしてやるぜ!」なんて微塵も思っていません。

だから、現場に配属された後、理念が職場で浸透していない状況を認識したとしても、憤りもなく、RJP(Realistic Job Preview)もなく、「まあ、どこの会社もこんなもんだよなー」で終わってしまうでしょう。

理念に関すること以外でも同じようなものだと思います。

キャリア入社者は新規学卒者と異なり、すでに会社組織というものを経験しています。会社組織の持つ(よくある)特徴を良くも悪くも理解しています。なので、多くのキャリア入社者は「変」だと感じることがあっても、「まあ、会社ってこんなもんだよなぁ」と折り合いをつけてしまうのではないでしょうか。

我慢できないほどの「変」なことであれば、世間は売り手市場ですので、別の会社に行くことを選択できますしね。「変」だと思う点を変えようと必死になる必要はありません。

こういった点から、人事部門として「変だと思うことがあれば、声をあげてほしい」というセリフは、人事部門としての本気さ(覚悟)を示せないようなら、むなしい一言だと思います。

3.「変」の軸を明確でないから

そもそも何をもって「変」か「変でない」かを決めれば良いのでしょうか。個人の経験や感覚的なもの以外に、判断軸はないのでしょうか。

会社は公式な「軸」が幾つかあります。例えば、行動指針や価値観(バリュー)と呼ばれるものです。最近では、多くの会社にあると思います。

「変」という言葉とはピッタリこないのかもしれませんが、行動指針や価値観はその会社で働く者としてとるべき行動や考え方が謳ってあると思いますので、それから外れた行動や考え方は「変」なものとして扱うことができると考えます。

キャリア入社者であろうがなかろうが関係ありません。会社として「変」な行動や考え方には異を唱えなけばなりません。行動指針や価値観といったもの以外に、コンプライアンスも「軸」ですね。

このように、何をもって「変」と判断すれば良いのかを明示・例示したうえで、キャリア入社者に「変だと思うことがあったら声をあげてください」と言うのであれば、メッセージが意味あるものとして感じられます。

応援団長

ただし、上述しました1番目の理由から結局は何も変わらないという事態になることも予想されますけど・・・。

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今日は、キャリア入社者に対して人事部門が言いがちな一言、

皆さん(=キャリア入社者)の目から見て、うちの会社で「ここが変だ」と感じる部分をがあれば、どんどん指摘してほしい。

について、私見を述べました。「変」な点を本当に言ってほしいと願うのであれば、覚悟と具体性をもってキャリア入社者に言葉を発したいところです。