マネジャーの負担を減らす?施策の「内的整合性」

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兄弟部屋である「ミドルマネジャーの部屋」のブログ記事で、

応援団長

ミドルマネジャーの皆さんは、自社の人事施策をちゃんと理解し、部下をマネジメントしたほうがいいですよ。採用を含め、人事施策に人事部門に任せている時代ではありませんよ

坂爪洋美・高村静 著『管理職の役割』中央経済社(2020年)

”ダイバーシティ経営”を軸としたシリーズ数冊の中の1冊です。ダイバーシティ経営シリーズの全体を通じて、「多様な人材を受け入れ、それぞれが能力を発揮し、経営成果として結実させるための戦略がわかる」としています(本の帯より)。

アカデミアの知が豊富に書かれた本ですが、とても読みやすいです。経営企画や人事部門の方々はもちろんですが、現場のミドルマネジャーの皆さんにも読んでほしい本だと思いました。役立ちそうな知識が書かれています。

応援団長

今回は、この本をもとに考えた「現場のミドルマネジャーを少しでも助けるために人事部門として注意すること」について書いていきます。

よろしければ、お付き合いください。

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この本に、こんなことが書いてあります。

著者

ワーク・ライフ・バランスやダイバーシティの実現に取り組むには部下の1人ひとりにかかる管理監督、チーム内調整、部下育成など管理職にとって重要な業務である「人」に関わる業務が当然に増加する。(36ページ)

応援団長

ミドルマネジャーをめぐる業務量的な負担、心理的な負担・・・・・言い尽くされないくらい、日に日に増している感があります。現代のミドルマネジャーは本当に大変です

”丁寧な向き合い方”に関して言うと、こんなことも書かれています。

著者

すべての管理職が行うコミュニケーションは、言語的コミュニケーションを中心としていることに変わりはないが、関わり方が命令や統制という一方通行の形から対話志向へその方法は変化した。(102ページ)

著者

部下に費やす時間が増加し、外部者との時間が減少するという時間の使い方の変化も認められた(104ページ)

更には、ミドルマネジャーが、

著者

自らの活動を振り返り内省する時間が殆どとれていない状況(104ページ)

著者

管理職の行動変容を難しくする(105ページ)

「ワーク・ライフ・バランス」 や 「ダイバーシティ」 への対応だけでなく、昨今のビジネス環境の変化に適応するためには、ミドルマネジャーがこれまでとは異なる意識・行動に変容することは欠かせませんので、このままだとまずいですね。

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そんなミドルマネジャーに対して、人事部門として何ができるでしょうか。一つの答えとして、人事施策の内的整合性を担保することが挙げられます。

本の中では、ダイバーシティ・マネジメントの文脈ではありますが、

著者

複数の人事施策間での内的整合性(それぞれの施策の目的が一致していること)が求められる(77ページ)

と言っています。

”ダイバーシティ”以外のテーマであっても、人事施策どうしが連動していることにより、現場のマネジャーに理解・実践され、施策が狙い通りに運用される確率が高くなるのではないでしょうか。

この点に関して、中原(2023)は「すべての人事施策は「内的整合性」を高めるべく設計されなけれならない」と言っていますし、田中・中原ら(2024)は「人事の諸機能が個別に動くのではなく、一つのチームになって連動しなければなりません」と表現しています。

参考書籍:中原淳 著『人材開発・組織開発コンサルティング』ダイヤモンド社 2023年
参考書籍:田中聡・中原淳・『日本の人事部』編集部 著『シン・人事の大研究』ダイヤモンド社 2024年

採用、配置・登用、育成、評価・処遇といった各人事機能が、様々な施策を出していると思いますが、そこに整合性の「軸」となるもの(=人材戦略)は明確にありますか?/整合性の「軸」となるものを意識していますか?

応援団長

ダイバーシティ(DEI)は、特に人事施策の「軸」として機能させないと、組織には浸透していいかないと感じます。

私の専門である人材開発で言えば、人材育成や研修に関わる部門だけで話を進めていませんか?

例えば、キャリア自律に関して研修を企画する場合、従業員向けに「キャリアデザイン研修」を、ミドルマネジャー向けに「キャリア面談研修」を外部ベンダーに依頼し実施していませんか?

キャリア自律を促す背景には、きっと人材戦略があるはずです。そして、キャリア自律を促すような人事施策(公募型異動、目標管理、能力開発プランなど)があるはずです。そして、そのベースには従業員一人ひとりのの個性を大切にする、ダイバーシティの思想が組織内に理解されている必要があります。

それらをどう連動させれば、従業員のキャリア自律を促し、彼・彼女らの意識・行動の変容を促せるかを考える。なので、研修などの施策を企画する際には、人事制度を企画する部門やDEIを推進する部門との連動は必須となります。

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現場のミドルマネジャーにとって、新しい人事施策がこれまでの施策との連動性や一貫性を感じられるものと映れば、部下へのメッセージングの際に余計な負担感を覚えずに済みますし、人材マネジメントに軸ができ、意思決定が迅速になったり、自信をもって組織運営をできるようなったりするのではないでしょうか。

人事部門としては各施策を連動させているつもりでも、現場にバラバラと見られているのであれば、要改善ですね。

応援団長

人事部内の諸機能がタコつぼ化していませんか? それが現場のミドルマネジャーの負担を増やしている可能性があります。ご注意を。

一方で、人事機能間や、CoEとHRBPの間での施策のダブりにも要注意です。例えば、複数のサーベイへの回答はミドルマネジャーだけでなく、全従業員の負担になっていますので。現状、多くの会社が「サーベイ祭り」になっていますから。