人的資本経営では、
経営戦略と人材戦略の連動
が1丁目1番地になっています。(→ 経産省 伊藤レポート2.0へ)
2つの戦略が連動していなければ、エンゲージメン向上やリスキリングなどのそ諸施策も大して意味を成しません。
ですので、理想を言えば、全ての従業員が自社の掲げる経営戦略と人材戦略の両方を認識しており、それらが自分の仕事にどのように関係しているのかを意識できている状態をつくりたいものです。しかし現実はそう甘くないですね。
全従業員がそんな状態になるのはかなり高いハードルですので、せめてミドルマネジャーが「経営戦略と人材戦略の連動」を意識し、人的資本経営の実現に一役買ってもらいたいところです。ところが、残念ながら、(経営戦略ではなく)人材戦略を意識し、日常のマネジメントをつなげているミドルマネジャーというのは氷山の一角だと思います。
なぜなのでしょうか。
私は、ミドルマネジャーの頭の中が以下のような状態だからではないかという仮説を持っています。
*人材戦略は人事部門だけが関係するものだと思っている
*人材戦略を遂行するのは人事部門の責務だと思っている
*経営戦略と人材戦略を連動させるという発想がない
*人材戦略と人材マネジメントの諸行為(採用・育成・評価など)が繋がっていると思っていない
いかがでしょうか。
仮説が正しければ、「経営戦略と人材戦略の連動」は到底叶いません。つまり、人的資本経営の実現は夢のまた夢ですね。是非何とかしたいところです。
私はいま、この点に日々タックルしています。
ミドルマネジャーへの集合研修、1on1などを複数の手段を通じて、ミドルマネジャーの皆さんに以下の3つのことを学んでもらう(学び直してもらう)ための施策を考え、取り組んでいます。
① マネジメントの全体像、諸概念を理解してもらう
② 各戦略間のアラインメントを理解してもらう
③ 人材戦略と人材マネジメントシステムの繋がりを理解してもらう
④ 経営戦略とつなげて、人材マネジメントを考えてもらう
今回のブログでは、各項目のポイントについて書きます。
※ 大手であれば、複数事業をやっている会社が多いと思います。そういった会社のミドルマネジャーにとっては、経営戦略よりも事業戦略のほうが身近な存在かと思います。よって、以下では、経営戦略と事業戦略と読み替えていただければと思います。
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① マネジメントの全体像、諸概念を理解してもらう
ここまで、経営戦略、人材戦略という言葉を何度も使っていますが、「戦略」という言葉をきちんと理解して用いているミドルマネジャーは、実はそんなに多くないのではないでしょうか。例えば、「戦略」と謳いながら、競合との差別化を意識していなかったり、「戦略」と「方針」という言葉を区別なく使っていたりしている光景を見かけます。
さらに言いますと、「戦略」の先にある「ビジョン」が「ミッション」のような表現になっており、それを部門メンバーに語っているとか、「ビジョン」と「戦略」が繋がっていないこともあります。
このような状態で、経営企画や人事はどうやって人的資本経営を実現させようとしているでしょうか。
もし仮に、ミドルマネジャーに「経営戦略と人材戦略を連動させましょう!」と声をかけたとしても、意味のある変化は生まれないでしょう。
まず、ミドルマネジャーの皆さんには、マネジメント職として活動するのに必要な思考の枠組み(マネジメントの全体像)の理解、そして、ビジョンやミッション、戦略などの諸概念の確かな理解、各概念のつながりや関係性を確実に理解してもらうのが、人的資本経営を実現するための第一課題なのではないかと思います。
今さらそんな基本みたいなことを、多忙なマネジャーを集めて研修や教育するなんてできませんよー、と言っていますと、いつまで経っても、人的資本経営は実現できないと思います。これはミドルマネジャーに必要な学び直しであり、きちんと学び直せば、いずれミドルマネジャー自身も助かるはずです。
② 各戦略間のアラインメントを理解してもらう
戦略には、経営戦略、人材戦略、そして「組織戦略」というものがあります。「組織戦略」をネット検索してみますと、アカデミアの世界ではあまり使われていない概念のようです。
コンサルティング会社などは「組織能力」と呼ぶこともあり、経営ビジョンを実現するための経営戦略を遂行するうえで、どんな組織(機能・規模)が必要で、どんな組織文化をいかにつくっていくかを考え、取り組むものです。
人的資本経営の実現に必要な要素として挙げられている「動的な人材ポートフォリオ」を描くときに必要なものなので、ミドルマネジャーには「組織戦略」を理解してもらいたいところです。
3戦略(経営・組織・人材)をアラインさせながらマネジメントを行うことが、組織の掲げるビジョンの実現につながることを現場のミドルマネジャーに理解・納得してもらうことが必須です。
③ 人材戦略と人材マネジメントシステムの繋がりを理解してもらう
人材戦略を遂行するとは、現場のミドルマネジャーは具体的に何をすればいいのでしょうか。それは人事戦略の中に語られていると思います。
人事戦略と言うと、現場のミドルマネジャーのとっては「他人事」「それは人事の仕事」と捉えかねませんので、人材マネジメントの諸側面(採用、配置・登用、評価・処遇、育成)として、具体的な理想のマネジメントを提示していったほうがいいでしょう。
例えば、人材戦略に則って採用活動を行う場合、どんな人材を募集するのか、面接などで何をどう聞いていくのかを現場のミドルマネジャー自らが考え、実践していく。
例えば、人材戦略に則って評価・処遇する場合、どんな点に関する目標を各メンバーと話し合って設定するのかを現場のミドルマネジャー自らが考え、実践していく。
育成なども同じです。人材戦略を意識して、現場のミドルマネジャー自らが行うこと。
ともすると、人材戦略を意識することなく、これまでの価値観や手法で採用も評価も育成もやることになりがちですので、そんなことにならないように、現場のミドルマネジャーを促す必要があります。
④ 経営戦略とつなげて、人材マネジメントを考えてもらう
③の内容を考えるときに、油断すると、経営戦略が飛んでしまい、人材戦略の範疇でものごとを考えがちです。それでは「経営戦略と人材戦略の連動」にならず、人的資本経営の実現にはなりません。
ミドルマネジャーには、常に「経営戦略と人材戦略の連動」を意識しながら考えるクセをつけてもらう必要があります。
例えば、経営戦略を遂行する際に必要な組織のケイパビリティはどのようなもので、それを実現するためにはどんな人材が何年後に何名必要なのか(=組織戦略として、動的な人材ポートフォリオの描写が必要)、それを実現するために、人材戦略に則り、どのように人材マネジメント(採用・評価・育成など)をやっていくのかを現場のミドルマネジャーが考えられるようになってもらうのです。
そう考えますと、
人材戦略は人事部門のためにあるものではない
ということを現場に理解してもらう働きかけを行わねば、人的資本経営の実現は画餅に帰します。
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人的資本経営の実現への道のりは長く、平たんではありません。しかし、目指すと宣言しているのであれば、人事部門として、人材戦略を経営戦略に連動させて現場に浸透させる必要があります。
そのために、ミドルマネジャーへの施策(啓蒙や学び直し機会の提供)は必須だと思います。
私が自社でやっている取組みに関しては、余程の秘密事項でない限りはお伝え出来ますので、情報交換しましょう。私のやっていることがベストではありませんので、皆さんからも多くを学びたいですー。
いつでも気軽にコンタクトしてください! hanabishi.708@gmail.com まで。
宜しくお願いしまーす!