今日は、今年7月にブログに掲載し、(私のブログの中では)多くの皆さんに読んでいただいた記事を再掲します。
最悪な研修がどのようにして生まれるか・・・いくつかのケースを挙げています。あるあるな話だと思います。研修を企画する際は要注意です。
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時折、受講者、企画者、講師の誰にとってもアンハッピーな研修を見る(やる)ことがある。
故野村克也氏(元プロ野球選手・監督)の残した有名な言葉に
勝ちに不思議の勝ちあり。負けに不思議の負けなし。
とあるが、それに倣って、
うまくいった研修に不思議の研修あり、失敗した研修に不思議の研修なし。
なんて言えるかもしれない。私が経験したアンハッピーな研修には「あれが原因だな」と、思い当たる節がちゃんとある。
実例をいくつか列挙すると・・・・・
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① 詰問を希望する
ある会社の人事部長が、マネジメント研修の商談の際にこう言った・・・
- うちの課長連中は考え方が甘いので、講師からガツンと言ってやってほしい。生っちょろい研修は不要。いかに自分がマネジメントをできていないかを自覚させたい
- グループワークなんて不要。講師から個別に指名してもらって、ガンガン突っ込んで受講者に恥をかかせてほしい
こんな発言をする人がいるのかと思われるかもしれないが、現実にいる。
この日の面談で、人事部長が上記の考えを変えそうにないと判断し、提案から下りることを決断。なぜなら、ガンガンに問い詰めて、人が態度や行動を変容させるとは思わないから。
後日談:他社がこの研修を請け負ったらしいが、クラスのしらけムードは半端なかったようで、散々な結果だったようである。
② 対話や話し合いを不要扱いする
マネジメント研修の打合せでの一言。
- うちの課長は優秀なので、座学やグループワークは最小限で結構です。
「うちの課長は優秀なので」は、枕詞として結構使われる(笑)。
この発言の意味するところを察するに・・・
1.あとで現場から文句言われると嫌なので、ちゃんとした研修をやってもらわないと困りますよ
2.受講者が退屈しないように、テンポよく進めてくださいよ
3.理屈っぽいことをいう人が多いので、注意してくださいよ
4.受講者が退屈してしまいますので、振り返りとか、それをグループで話し合ったりする必要はないですよ
5.管理職は多忙なので、研修をできるだけ短時間で終わらせたいんです
こんなところだろうか。
1~3は「お任せください」ってな感じなのだが、4~5は「はい、分かりました」とは言えないことがある。研修の効果が全く保証できないからである。
対話や話し合いの価値を理解していない人/自ら感じたことのない人は、こんな発言をしがちなのだろう。
日常においてマネジャーは孤独である。研修機会を通して、他のマネジャーの経験や考えを聞いてみたいと思う人もいる。他のマネジャーの考えを聞くことで学びや気づきを得られることも結構ある。
”うちのマネジャーは優秀だから” という言葉を理由(言い訳)にして、短時間で終わらせようとするくらいなら、何もしないほうが良い。お金と時間の無駄遣いである。
③ 上司にモノが言えない組織
”上司にモノが言えない” ことで最悪な研修が生まれる。
ある会社との間でマネジメント研修の打合せを行っていた。先方の参加者は、人事部人材開発課の課長とメンバー数名。実施日が迫っていたのだが、内容がなかなか確定せず、本番5日前にようやく確定。
研修当日を迎え、開始前の準備をしていると、人事部の部長が顔を出し、課長に一言。
- 資料を見たんだが、以前に俺が伝えた内容が反映されてないじゃないか!どうなっているんだ!すぐに内容を変更しろー!
それに対して課長(も、もちろんメンバーも)は反論どころか、意見もしない。ただ「はい、分かりました」。皆さんの表情がこわばっている。
すでに用意した研修資材をもとに、できるだけ部長の要求を取り入れながら研修を進めるが、内容はグダグダ・・・。受講生の反応も薄い。
あとで課長に聞いたのだが、部長に研修内容の確認を催促しても大抵返事が遅く、最後のほうはノーレスポンスだったようである。課長としては、本番までの時間がなかったので、部長の最終返事を得ないまま、「これで行こう」と決断したようである。
部長の仕事ぶりにも原因があるのだが、部長に誰も何も言えないに状況に唖然とした。受講生が置いてけぼりになっている。
特殊ケース:講師とのズブズブの関係
あまりないケースだが、こんなケースもある(実例)。
ある会社(A社)でのマネジャー研修で、10年以上の実績のある講師がいた。
この講師は、A社の研修部門に所属する誰よりも、この会社のことを理解しているという自負があり(A社上層部ともコネクションがあり)、研修部門の人たちも「この人の言うことだったら」と、内容はほぼお任せ状態だったようである。
ある年のマネジャー研修で、受講態度の少々悪かった受講者に対して、その講師が強めの言葉を発したのだが、その受講者が「だったら、あなたがやってみたらいいじゃないですか!」と反論。他の受講者も「そうだ、そうだ」と乗っかり、研修が ”炎上” したようである。
調子に乗っていたと思われる講師に問題もあるが、お任せ状態にしていた研修部門にも問題がある。
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今日は、最悪な研修が生まれる原因の話でした。原因はまだまだあります。
研修は本来「経営に資する」ために行われるもの。そこを外してはいけません。
ここに書かれたようなケースって、数は多くないと思います。が、人材版〇〇レポートに好事例としてピックアップされているような会社のことかもしれません・・・・。