教材の話:テキストとワークブック

workbook 研修を企画するときの部屋
workbook

今回は、集合研修で受講者に配付される資材に関する話です。

配付される資材としては、以下のようなものがあります。

*テキスト
*ワークブック
*レジュメ
*ケース
*チェックシート
       など

中でも、今日は「テキスト」と「ワークブック」について、述べてみたいと思います。

*************

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
最新情報をお届けします。

テキストとワークブックは別物です

まず、テキストとワークブックは別物です。

私の経験上、研修のプロフェッショナルである人たちでさえ、この差異を認識していない(気にしていない)ことが結構あると思います。

テキストとワークブックの差異を認識していないことで、もしかしたら研修効果(=知識習得、態度・行動の変容)に悪い影響を与えているかもしれません。

なぜなら、研修の目的や進め方によって、テキストとワークブックのどちらを用意すればベターかどうか(or 両方用意すべきか)は異なるからです。

まず「テキスト」とは、 広辞苑によりますと、

①原文。原典。本文。テクスト。
②教科書。特に、講義・講演の概略などを記した印刷物。

英語では「textbook」ですが、英和辞典で調べると、上記②と同じく、教科書とか教本と出てきます。

では「ワークブック」は、広辞苑によりますと、

児童・生徒の自学自習のために編集した図書。学習帳。練習帳。

英語でも「workbook」と言いますが、英和辞典で調べると、やはり学習帳、練習帳と出てきます。

この時点で、両者に差異を感じていただけたいのではないでしょうか。

なお、実際に研修で使用される教材は、テキストとワークブックの要素が混在したものが多い気がしますが、この記事では各々の特徴を理解するために、敢えて二分して述べていきます。

では、テキストとワークブック、それぞれにどんな特徴があり、どのように活用するのでしょうか。

*************

テキストを活用するとき

テキストは教科書です。学生の頃を思い返してみてください。

テキスト(教科書)の中に、先生の言ったことや自分の考えを書き込むスペースはありましたか?

ないですよね。文字がツラツラと並んでいると思います。(たまに、図表が掲載されていますね)

テキストは、受講生が学習内容をしっかりと理解したり、記憶したりするために用意されている資材です。

例えば、マネジャー向けの研修で、

*人事評価制度
*労務管理
*コンプライアンス

などの、個人の解釈や置かれた状況に依らない(普遍的な)内容を学ぶ場合、テキストが適しています。(学校の教科書って、まさにそんな感じですよね)

他にも、異動や転職によって職種や仕事内容が大きく変わったり、革新的な技術が出てきたりして、これまでの知識や経験が生かせない状況の場合、まずは基本的な知識を理解する必要があります。そんなときもテキストが向いてます。

テキストの利点は、基本的な知識や必要な情報が漏れなく正確に書かれているので、研修後に見返す際に便利ですね。まさに、広辞苑に書かれているように ”原典” のようなものとしてテキストは位置づけられますね。

加えて言うと、テキストを活用する研修は受動的な学習が多いように思います。つまり、先生や講師といった立場の人が一方的に話をして、受講生はその話を聞いて記憶する機会というイメージです。

学生時代の ”授業” の多くはそんな感じでしょう。

*************

ワークブックを活用するとき

ワークブックは学習帳・練習帳です。

ワークブックを活用する研修は、能動的な学習を期待して設計されたものが多いと思います。つまり、受講生自らで考えたり、積極的に他者と話し合ったりして、自分なりの学びを見つけるようなスタイルの研修でワークブックは使われます。

少しだけ話を脱線させますが、ビジネスパーソンの多くは「経験から学ぶ」と言われています。皆さんも、これまでのビジネス経験の中から様々な学びを得ていらっしゃることと思います。

この「経験から学ぶ」という点に関して、北海道大学の松尾睦先生は ”3つの壁がある” とおっしゃっています。壁とは、「経験から学ぶ」ことを邪魔するものです。それは、以下のようなものです。

*振り返りの壁
*教訓の壁
*応用の壁

※ もっと詳しく知りたい方は、松尾睦 著『経験学習リーダーシップ』ダイヤモンド社(2019年)で。

3つのうちの1つ、「振り返りの壁」ですが、これはせっかくの経験を振り返らない/振り返れないという状況を言っています。例えば、

●振り返りをしない/そんな習慣がない
●面倒なので、日報/週報などは適当にしか書かない
●日々が忙し過ぎて、振り返ろうにも時間が取れない

こんなこと、ありませんか?

話をもとに戻しますと、ワークブックを活用する研修は、自らの経験をもとに学びを得ていくように設計されていることが多いですので、「経験から学ぶ」ことのできる絶好の機会なのです。

例えば、研修中に

*~のような経験をしたとき、あなたはどのように感じますか
*~のような経験をしたとき、あなたはどのような対応をしますか?
*~のような場面に出会った場合、まず何をしますか?

といった問いを投げかけ、

*自らの経験や考え、思いを書き出させることで、自分の経験を整理させる
*書き出したことについて、自分を俯瞰させることで「あっ!」、「なるほど」、「やっぱり」という気づきを促す

そのために、ワークブックには書き込むスペースが(結構たっぷりと)用意されています。

更には、他者の経験も学びのヒントにしてもらうために(グループワークの時間を用意し、)他者の経験をメモしたり、他者の経験を聞いて得られた学びや気づきをメモしたりできるようになっています。

そんな使い方をしますので、

ワークブックは、研修後に(自分だけの)テキストに変わる

という言い方もできます。

*************

今日は、研修資材(テキスト、ワークブック)に関するお話でした。

現実を見ますと、資材に関連して、以下のような残念なケースが散見されます。

  • ワークブックに関して
    経験からの学びを狙った研修にも関わらず、研修時間の短縮や受講生の(書き込む)負担軽減を理由に、ワーク時間を減らし、あとで見返した際に理解しづらい内容(項目の羅列など)の印刷物を配付する研修
  • テキストに関して
    体裁を気にしない。投影するパワーポイントスライドを2in1で印刷した(だけの)ものを配付する研修

研修資材は体裁(見た目)も重要です。

些細なことかもしれませんが、こういったことも研修効果に影響を与えていると、私は考えています。皆さんはどのようにお考えでしょうか?