仕事上、何かをする場合には必ず目的がある。研修も同じで、研修には必ず実施目的がある。
しかし、研修に ”目標” がセットされていないケースはないだろうか。目標という言い方にはこだわらないが、「この研修で、どこに到達すれば良いのか/どんな状態になっていればOKなのか」を明示したもののことを言っている。
なので、ゴールと言ってもいいし、到達目標と言ってもいい。
仕事柄、様々な研修に参加したり、見学させてもらったりすることがあるのだが、
目的はあっても、目標のない研修
は結構な確率で存在する。
今日は、目標のある研修の利点を挙げてみる。
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利点① より効果的な研修を作ることができる
これは、研修企画側にとっての利点である。
冒頭で、研修には実施目的が必ずあると述べたが、ミドルマネジャー向けに研修を企画するとしよう。
目的を表現するにも色々とあるが、例えば、
*マネジメント能力の向上を図る
といった表現は、相当に抽象的だが言っていることは理解できる。一段粒度を細かくして、
*コーチングを学ぶ
*1on1ミーティングをうまくできるようになる
*部下のキャリア支援を適切に行えるようにする
といった感じの表現も、目的としてよく使われている。
目的の表現は、こんな感じで、多少抽象的であっても問題ない。ただし、それは目標が存在しているという前提でのみ許容される。
目的を達成するために、どのようなことを知っておく必要があるのか(知識面)、どのようなことができないとしけないのか(スキル面)を考えなければならない。それが目標設定に関係してくる。
例えば、「部下のキャリア支援を適切に行える」ためには、
- キャリア支援と通常の業務支援では何が異なるのかを理解する(知識面)
- キャリアとは何かを理解する(知識面)
- キャリア支援の具体的な手法を習得する(スキル面)
更に言えば、
- キャリアを支援する必要性を理解する
といったマインドセット面も目標として必要かもしれない。
目標の上位概念である目的を達成するためには、どのようなことが必要かを洗いざらい考え、目標としてセットすることで、初めて研修の内容や進め方、適正なクラスサイズなどを考えることができる。
「マネジメント能力を向上させる」といった、抽象的に表現された目的だけでは、本当に効果的な研修を作ることはできない。(何を作って良いのかわからない)
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利点② ちゃんと受講した感がもてる
これは受講者にとっての利点である。
「マネジメント能力を向上させる」といった目的を示され、半日間~1日間、2日間といった貴重な時間を活用して受講をした研修について、受講直後に受講者は何を思うのだろうか・・・。
学んだことを活用するイメージが、受講者の頭の中で具体的にできていれば申し分ないのだが、以下のような感想を抱いている受講者がいるとすれば救ってあげないといけない。
*ちゃんと受講したのだが、本当に参加したなりの価値があったのだろうか
*学び残しや、勘違いな学びはなかっただろうか
そんな不安や懸念を払しょくしてあげるためには、研修の最後の最後に、研修の目標を示してあげると良い。(研修開始時に示したものを、最後に再提示する)
研修終了時点で、こんな状態になっていればいいですよ!というのを示しているのが ”目標” である。
ここで注意点がある。利点①で挙げた例を再活用すると・・・
- キャリア支援と通常の業務支援では何が異なるのかを理解する
- キャリアとは何かを理解する
- キャリア支援の具体的な手法を習得する
といった目標よりも、以下のような表現の目標のほうが良い。
- キャリア支援と通常の業務支援では何が異なるのかをポイントを列挙できる
- キャリアとは何かを説明できる
- キャリア支援の具体的な手法を説明できる
なぜか。
理解できたかどうかは、そのことを(自分の言葉で)説明できるかに関係していることが多い。説明できなければ理解不足だとも言える。
この研修に参加した甲斐や価値、意味があったのかどうかを自己診断するには、「理解したかどうか」を問うよりも、「説明できるかどうか」や「ポイントを列挙できるかどうか」を問う表現の目標がベター。
目標を示すことで、仮に理解不足があったとしても、どこに理解不足があるのかが分かるので気持ちがスッキリするし、分からない点は質問ができる。
受講者に学んだ感をもってもらうためにも、自己診断できる表現で研修の目標を設定し提示したい。
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利点③ 研修効果の向上へ
これは、受講者と研修企画者の双方にとっての利点である。
利点②で述べたように、研修終了時点で「説明できる」や「列挙できる」状態をつくるのは、研修そのもののを効果を図るうえでとても重要なことだが、本来の研修目的は、受講者が学んだことを実践し、それが習慣化され、しかるべきビジネス成果につなげることである。
ただし、ビジネス成果には景気を始め、様々な要素が関係するのが普通なので、研修だけの効果を測定するのは至難の業。ビジネス成果につながるであろう行動の習慣化を研修の最終目標として考えたい。
そうした場合、研修終了時の目標「〇〇を説明できる(列挙できる)」は、その通過点である。
- 説明(列挙)できないものは実践できない
- 実践できないものは習慣化など不可能である
- 習慣化できないということは、狙っている成果につながらない
狙っている行動の実践や、その習慣化のための仕掛けは別途考える必要があるが、その手前に研修の目標を明確にセットし、行動変容のための準備状態を確実に高めることがまずは肝要。
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今日は、研修には(目的だけでなく)目標を設定しましょうという話でした。
研修に限らず、学びの機会が注目されている現在、少しでも意味のある学びの場をつくっていきたいですね。
★参考書籍★