“充実した研修メニュー” の価値

training 研修を企画するときの部屋
討議の様子

会社(特に大手)は、従業員の成長やキャリア自律、自己啓発を支援するために、豊富な研修メニューを用意し、従業員に提供しています。

研修の受講に際して、会社が費用負担し、勤務時間中の受講もOKとしているケースもありますね。

そのような制度には、

当社にはこんなに充実した研修メニューが揃っています!

と謳うことで、優秀な人材の離職を防いだり、採用したりするための理由があるのかもしれませんね。

応援団長
応援団長

少々穿った見方なのですが、人的資本の情報開示義務に関連して、従業員一人当たりの研修受講時間などを公開するため、研修メニューを豊富に取り揃えて、従業員に受講を促しているなんて動きがありそうな気が・・・。そんなわけ、ないですよね。

*************

応援団長
応援団長

ここで敢えて、人材開発部門にお勤めの皆さんにチャレンジします。

充実した研修メニューの豊富さって、本当に企業の「売り」になりますかね?

いかがでしょうか。各社のデータを見てみますと、あんまり「売り」になっていないようですけど。

→ 学生が会社を選ぶ際のポイント記事へ(マイナビさんのサイト
→ 20代の若者が会社選びで何を気にしているかの記事へ(パーソル総研さんのサイト
→ 転職者が会社選びで何を見ているかの記事へ(エン・ジャパンさんのサイト

*************

このブログでも何度か言っていますが、「学ばない人が多い」と言われている日本人ビジネスパーソン(→ 関連するブログ記事へ)に研修メニューの豊富さを従業員にアピールしたところで、

よし、〇〇研修を受講してみよう!

なんて思う人は少数だと思います。(→ プレジデントオンライン 「学ばない」ことに関する記事:パーソル総研 小林さん

先ほど紹介しました、エン・ジャパンさんのデータからは、歳を重ねる毎に「教育・研修が整っていること」のスコアが下がっており、反対に「経験・スキルを活かせること」のスコアはあがっています。

その点からの推察ですが、歳を重ねるごとに、保有する経験やスキルで勝負しようとしており、スキルのアップデイトやリスキリングを意図的にやっていこうという気概や風潮のない現状が想像できます。

救いは、上記パーソル総研さんのデータにて、経年変化として、「色々な知識やスキルが得られること」と「入社後の研修や教育が充実していること」のスコアが上がってきていることです。

会社が一生面倒を見てくれる時代ではないことを知っているのか、若者は(会社のためではなく)自分のために、会社の用意する成長機会に期待しているのかもしれません。

そんな若者の支援のカギを握っているはずのマネジャーはというと、残念ながら、自ら学んでいる人は少ないでしょう。よって、若者の模範になりませんし、模範になるようなこと/気の利いたことは言えない・・・・。

今は少なくなってきていると思いますが、研修を受けたいと申し出をしてくる部下に対して、

そんな暇があるなら仕事しろ!

なんて上司が昔は結構いましたね。

*************

私は「充実した研修メニュー」を否定しているのではありません。本当に、企業の「売り」にするのであれば、

*私の会社には成長機会がたくさんある
*私の会社にある研修を受講したことで、その後のキャリア充実につながった

*私の上司は成長機会を提供してくれる

といった質問に、従業員が「YES」と回答する人の比率の高さを社内外に謳ってはどうでしょうか。成長機会の有無に関しては、多くのエンゲージメント調査の項目にも入っているのではないでしょうか。

*************

観点が変わりますが、”働きがい” と ”働きやすさ” という言葉があります。

故ハーズバーグさんの有名な2要因理論(→ グロービスさんのサイトへ)がありますが、”働きがい”は動機づけ要因に、”働きやすさ”は衛生要因と捉えた場合、「充実した研修メニュー」は衛生要因のほうに該当するのだと思います。

つまり、「充実した研修メニュー」は従業員の ”働きがい” には関係しない。不満の解消にはなるかもしれませんけど、職場や仕事への満足の向上にはなっていないと言うことでしょうか。

”働きやすさ” ももちろん無視はできませんが、人材開発部門としては ”働きがい” の向上に資する貢献をどんどんしていきたいですね。(”働きやすさ”だけ提供していては、ゆでガエル状態になります)

*************

今日は「充実した研修メニュー」に関して私見を述べました。

応援団長
応援団長

充実していたほうが良いのは間違いないです!ただし、それ自体が目的ではないということと、”働きがい”向上への効果は怪しいのではないかという点を人材開発に関わるものとして自覚していることが大切なのでは、というのが主張のポイントでした。