大人数の研修の効果や、いかに。

training 研修を企画するときの部屋
討議の様子

こんな相談が結構ある。

予算の都合で、1クラス40~50名にしたいのですけど構いませんか?

予算に上限があるから・・・と言われると断りようがない。「わかりました」とやむを得ず受けることがあるのだが、研修を実施してみると、とても残念な結果になることが殆どである。

なぜか。

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① 大人数は隠れ蓑になる

何の動機づけもなく、「人事部に言われたから参加しました」といった程度のモチベーションで研修を受けている人にとって、研修を適当にやり過ごすには大勢での受講のほうが紛れやすいので都合が良い。

そういった、もともと学ぶ意欲のない人が研修で同じグループにいた場合、学ぶ意欲のある人にマイナスの影響を与えることだってある。

特に、マネジャーを対象とした研修は要注意。 ※ 関連ブログ記事「研修を嫌う課長たち」

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② クラスの一体感は生まれない

業務上で必要な知識のインプットを目的とするような研修であれば、講義形式でやればいいので、大人数の受講でも全く問題ない。(効果はよくわからないが)

そうでなくて、例えば、マネジャーを対象に「部下育成」や「職場づくり」とテーマとした内容で、対話を通して学びを深めたりするような参加型タイプの研修であれば、一人ひとりが他者と積極的に関わり、グループやクラス全体での学びへ貢献し、クラス全体に一体感のようなものが生まれると、受講者の学びは(単独学習と比較して)大きなものになるだろう。

そのように考えたとき、参加型タイプの研修の適正なクラスサイズは、私の経験上、多くても20数名だと思う。しかも、時間を一定程度確保したほうがよい。

30名以上でやっていると、クラスに一体感は生まれにくい。ましてや、半日間程度の研修では望んでいる効果は望みづらい。(オンラインなら更に無理だろう)

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③ 講師の力量でどうにもならない

受講人数が多くても何とかするのがプロの研修講師だろう!

という人もいるかもしれないが、講師にだって限界はある。

研修転移に関する研究結果で、受講者が研修で学んだことを現場で実践できるようにするためには、「いつ」「誰」が関わるといいかという点について、研修中の講師の関わりは中程度の影響しかないと言っている。

それより重要なのは、受講者の上司の研修前後の関わりなのだが、課長の研修を考えた場合、その上司は部長。部長が課長の受ける研修に興味を抱くケースは残念ながら稀なのが現実。

30名以上の受講者を相手に、一人の講師が半日間程度で全員の顔と名前、特徴などを把握・記憶できるはずもなく、関わりなど持てるはずもない。

ましてや、参加意欲の低い(マネジャークラスの)受講者とのリレーションを構築するのに、(20名程度のクラスサイズでも)最低でも半日間程度はかかるだろうから、受講者の受講態度を劇的に変え、学びを促すようなファシリテーションは難度マックス。

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今日は、大人数での研修についてのお話でした。

本当に学びを考えるのであれば、半日間程度で行う大人数の研修なんてほぼ無意味と心得たほうが良いでしょうね。(特に、マネジャー以上を対象とした場合)

「でも、うちは大手企業だから、課長だけでも〇〇〇名いるし・・・」、「1クラスを20名にすると、実施回数が多くなって、今期だけで終わらなくなってしまうので・・・」って、これは研修を企画する際の正しい判断要素ではないと思います。

ミドルマネジャーが学ぶ内容(部下育成や職場づくりなど)には、”旬” や ”賞味期限” のようなものがないこと(普遍的なもの)が多いです。ましてや、絶対に今期中にやらないといけないという理由はあまりないと思いますよ。

組織の持続的な成長・発展を真剣に考えるのであれば、予算やクラス人数、実施時間(例:半日間で)といったスペックを最優先するのではなく、経営に資する人材・組織づくりとして、誰に・どうなってほしいのか(どういう言動をとってもらいたいか)を最優先して企画し、意思決定することだと思います。

それが、人材育成に関わる部門の使命であり、プライドではないかと思います。