ミドルマネジャーの負担は増すばかりの風潮ですね。このままでは、現在奮闘しているマネジャーも心身ともに消耗し、将来の組織にとって禍根を残すことになりそうです。
そもそも、どうしてミドルマネジャーが消耗しているのでしょうか。マネジメントしなければならない業務の「量」もさることながら、「質」に大きな原因がある気がします。
では、「質」に影響を与えているものは何か・・・私がパッと思いつくものとして・・・
*ハラスメント
*働き方改革(特に、労働時間の制限)
*多様性対応
を挙げます。いずれも、経営上で大切なことですので無視できないことなのですが、企業が行う様々な関連施策が ”健全に” 機能するためには、従業員にいくつかの前提が成立している必要があるのではないでしょうか。
どんな前提かと言いますと、
*従業員が主体的に働く意思を持っていること
*従業員が自己規律を有していること
*従業員が自らを客観視できること
*従業員が他者を受け入れるマインドを有していること
などです。
残念ながら、このような前提を全てクリアしている従業員の割合は消費税率(10%)より小さいですよね。だから、ミドルマネジャーに頑張ってほしいんだ、ということなんでしょうけど、全てをミドルマネジャーに任せるというのはいくら何でも可哀そうです。
経営層や人事部門、研修部門の皆さんも、きっとそう考えていると思います。でも、実際に何かしらの支援をミドルマネジャーに提供できているでしょうか。
ミドルマネジャーのお給料をドーンとあげるとか(→日経新聞社さんの関連記事)、部下の人数を減らしてあげるとかはやっている会社があります(→日経ビジネスさんの関連記事)。
他に打ち手はないものでしょうか。
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私は、
「被〇〇研修」
をやったほうがいいと思っています。すぐに思いつく具体的な研修として、「被評価者研修」「被コーチング研修」「被1on1研修」「被キャリア面談研修」を挙げます。
これらの研修は本来、従業員の成長のために行われるものであって、ミドルマネジャーのために行われるものではありません。更に言えば、ミドルマネジャーのスキルアップは手段であり、本来は従業員のパフォーマンス向上を通して、経営目的や目標を達成するために行われているものです。
しかし残念ながら、多くの従業員はこう受取っているのではないでしょうか。
*評価とは、お給料に関係している制度であって、成長には無関係なもの
*コーチングや1on1なんて、やっても意味はない。結局は成果さえ出せばいいんでしょ
*コーチング? あれって誘導尋問じゃないか。言いたいことがあるなら早く言ってくれ
*キャリアなんて考えても叶うもんじゃないし、考えるのが面倒くさい
どうですか。こんなマインドの従業員に対して、ミドルマネジャーに「〇〇研修」でスキルを付与しても、狙った効果はそんなに期待できそうにありませんよね。
そもそも、なぜ「評価」するのか、なぜ「コーチング」や「1on1」を行うのか、なぜ「キャリアを考える」のかといった、「なぜ?」をマネジャーはわざわざ従業員に説明しないケースがきっと多いのではないでしょうか。仮に説明したとしても、信頼されていないマネジャーからの説明を従業員は素直に受け入れませんよね。
ミドルマネジャーだって、従業員に対して「〇〇研修」で学んだことを実践しても肯定的反応が得られないのであれば、「やっても無駄だ」「人を変えるのは難しい」と捉え、継続実践を諦めてしまうのではないでしょうか。
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ですから、「被〇〇研修」といった学びの機会を従業員に対して用意し、きちんと施策の「なぜ」「何を」「どうやって」を正しく理解するように促したほうがいいと思うのです。
ミドルマネジャーを信頼していようがいまいが関係なく、会社の公式メッセージとして「全部、あんた自身のためやで。ちゃんとしいや」と、従業員に自己規律や主体性を促す。これで、ハラスメントや働き方改革に伴う、ミドルマネジャーの心身の負担はいくらかは軽減すると思います。
本来、主体性を指示するっておかしな話ですけどね・・・
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元プロ野球選手のイチローさんが現役高校生へのメッセージとして、「自分に厳しくあってほしい」とおっしゃています。(→関連するヤフーさんの記事)
「最近の風潮として、指導する側が厳しくできないから」とおっしゃっており、これは企業におけるハラスメント問題と関連する点かと思います。
ミドルマネジャー側に従業員への愛があろうがなかろうが、厳しく指導しづらい現代において、成長を促すのは「自分で自分を厳しく律することができるかどうか」というイチローさんのメッセージ。
私は大きくうなずきました。キャリア自律の基盤だと思います
会社の行う施策は ”会社の成長・発展のため” という側面があることは事実ですが、一方で「従業員の成長のため」という側面だってあります。
自己成長のために自分を律せよ、というメッセージを「被〇〇研修」の中で強く伝えることで、ミドルマネジャーはマネジメントが「質」の面で楽になりますし、「量」の面にも好影響が出てくると思います。そして何より、施策を本来の狙いの達成度合が大きく変わると想像します。
ミドルマネジャー自身が自己を律していることも重要ですけどね(汗)。
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従業員向けの「被〇〇研修」は、ミドルマネジャー向けの「〇〇研修」よりも受講対象者が多いぶん、予算もかかりますし、時間や手間も多く発生します。
それでも、やらないよりもやったほうが、会社にとっても個人にとっても(中期的に)価値があると思います。
いかがでしょうか。検討してみませんか?