この本を読みました。
土井哲 著『成果を出す企業に変わる 組織能力開発』幻冬舎(2023)
ちなみに、タイトルの ”組織能力” は以下のように定義されています。
「組織の一人ひとりが行動や活動を通して発揮する力の総和」(36ページ)
以下の項目で感想を整理しています。
1.この本を手に取った理由
2.印象に残った箇所と考えたこと
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1.この本を手に取った理由
人的資本経営の”1丁目1番地”と言われる「経営戦略と人材戦略をいかに連動させる」ことについて、ヒントを得たいため。 ※ 目次にそれらしい言葉が書いてあった
2.印象に残った箇所と考えたこと
32ページ
保有する事業の性質や、それぞれの事業戦略が異なる場合、求められる人材像も異なるのが当然。事業戦略が求める人材像を明確にせずに、経営戦略からいきなり人材戦略を導こうとするのにはかなり無理がある
まったく同意。
至極当たり前のことなんだけど、経営戦略と事業戦略は大きく異なることが殆ど。(→ 関連するブログ記事へ)
そのあたりを理解しないと、人材戦略とのリンケージがうまくできず、人的資本経営は画餅に帰す。
107ページ
新しい人事制度を戦略と無関係に人事部が打ち出してしまうと、今までの日本型雇用システムに沿って仕事を行ってきた現場からの反発は大きくなるもの
ここで言っている戦略とは事業戦略のこと。
なので、本社人事(CoE)よりも事業部人事(HRBP)のほうが、人的資本経営を推進していくうえではキーパーソンになるなぁ。本社人事は全社共通の戦略やガイドライン、ポリシーを制定し、事業部人事のサポート役に徹する・・・・・それが理想的な役割分担。
問題はそれをいかに実現するか。事業部人事は目の前の対応でいっぱいいっぱいのことが多いだろうから、オペレーションの効率化は必須。
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45ページ
組織能力開発を行うためには、まず、企業のありたい姿を言語化したパーパス、ミッション、ビジョンを適切に設定することが必要
50ページ
実現可能性が極めて低い、高過ぎるビジョンは組織全体に悪影響をもたらします。実現可能性をよく考えたうえで、その後の戦略と結び付けられるビジョンを組織全体に対して明確に示すことが重要
同意。多くの組織がありたい姿の設定はやっている。しかし、”適切に設定” できているかは大いに疑問がある。特に、ビジョンの適切さに関しては、実現可能性にもつながるが、「いつ(まで)に実現するのか」という点が明示されていないケースが多くある。(→ 関連するブログ記事へ)
「いつまでに」が設定されていないビジョンに対して戦略を設定しても説得力がない。
組織のリーダーが適切にビジョンや戦略を描けたとしても、従業員にとっては興味の薄いものになりがちなので要注意。
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38ページ
事業戦略は事業部門が立てるもの、組織構造は経営企画が、人事制度は人事部門が考えるという会社が多かったと思います。3要素が連動しておらず、別々な方向を向いてしまっている
という事実を、組織の中のどれだけの人が認識しているのだろうか。たぶん、殆ど認識していないし、連動させなきゃいけないなんて考えていないはずだ。そもそも・・・
*人的資本経営という言葉を経営者・管理者・従業員は知っているのか
*人的資本経営で狙っていることを経営者・管理者・従業員は理解しているのか
(これまでの経営との違いを理解しているのか)
*人的資本経営を経営者・管理者・従業員は本当に必要/有益だと思っているのか
上記の問いにすべての関係者が「YES」と答える状態は非現実的だし、具体的な施策の話になると「総論賛成、各論大反対」という人が多いだろう。
とはいえ、”人的資本経営” が経営企画部門と人事部門だけのお祭りになっているようでは、失われ続けている時間が今後も継続するだろう。
事業部門のトップと現場のミドルマネジャーの腹落ち感をいかにつくるか。
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この本を読んで、新鮮な発見はあまりなかったのですが、やっぱりそうだよなーと再認識できたことが多かったです。
「経営戦略と人材戦略をいかに連動させる」ことの前に、以下のアジェンダを何とかしなくてはいけないと思いました。
1.CoEとHRBPの連携 ※特にHRBPの支援・養成
2.人的資本経営に関する関係者の納得感の醸成 ※特に事業部門トップと現場のミドルマネジャーの納得