残念ながら世間一般的に、研修に対する期待値は、決して高いとは言えないだろう。
どうしてそうなっているのか・・・そこには色んな要因や背景はあるだろうが、「果たして実施する必要性があるのだろうかと思われる研修の受講経験」が一因になっていると想像する。
以下のようなケースである。
ケース①
管理職を前にした人たちにマネジメントを学ばせたいんですよ。
クライアントから、こんな要望をいただくことがある。
実際に管理職になってから学ぶのでは遅い、という発想なのだろうか。
以下、面談にてこんなやりとりが続く。
私:受講予定の皆さんは、いつ管理職になるのですか?
クライアント:人に依りますけど、早い人で来年、遅くて2~3年後でしょうかね。
私:どんな内容を学んでほしいのですか?
クライアント:マネジメントに関する基本的な内容がいいですね。
私:受講予定の皆さんは、後輩に対する一次考課者ですか?
クライアント:いいえ、一次考課者は課長です。
私:では、”部下” と言える存在はいないのですね。では、受講予定の皆さんには必ず後輩はいるのでしょうか?
クライアント:部署によりますね。いない人のほうが多いですかね。
私:後輩の面倒を見てほしいといったメッセージは、人事部門や上司から出ているのですか?
クライアント:上司によりますね。まあ、プレイヤーとしての期待のほうが大きいですね。
私:・・・・・。
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どうだろうか。
*学んだことを活かす場面がない/相手がいない
*活かす場面はずいぶん先、しかも明確に○年後と断言できない
こんな状況だと、受講する側の受講モチベーションは低いだろう。仮にモチベーションの高い人でも、活用できる場面がないのであれば、学習したことは数か月もすれば忘却の彼方へ・・・・。
そんな経験が「研修なんてさ~・・・」という意識を生むのは想像できる。
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ケース②
管理職には、部門の戦略を描けるようになってもらいたいんですよ。
こんな要望もたまに聞く。
戦略立案のために学ぶフレームとして「SWOT分析」と言われるものがある(→ SWOT分析とは:グロービスさんのサイトへ)。
手法自体は大切な考え方に基づいているので全く否定するものではないのだが、現場のミドルマネジャーに必要なのかなぁ?と思ってしまう。
そう思う理由は、以下のとおりである。
- 一度の研修で学んだだけで習熟できる内容ではないから
- 現場のマネジャーは、分析するために必要な情報を十分に持っていないことが多いから
- 分析の結果、戦略を立てたとしても、結局は目先の対応に追われるのが現実だから
しかも、「SWOT分析」を活用する場面って、そんなに頻繁にはないだろう。活用する場面がそんなになければ、習熟しない。
*活用場面がないわけではないが、たまにしかない
*活用してのアウトプットが現場で活かされない
こんな経験が「研修なんてさ~・・・」という意識を少しずつ醸成していくのが想像できる。
以下は、戦略立案研修を実施するのであれば、の私案。
戦略立案・遂行系の取組は、組織開発(→ 組織開発に触れたブログ記事)を活用するほうが効果的なのではないかと考える。例えば、
案1.
戦略立案が主要業務である部署(経営企画、マーケティング など)が組織開発のノウハウを身につけて、各部門を行脚して、(ミドルマネジャーと協働して)戦略を組織に浸透させていく
案2.
HRBPを活用したり、組織開発専門の部署を作ったりして、戦略立案部門の考えたものを各組織に浸透させていく
ただし、今後ジョブ人材マネジメントが国内に浸透し、ミドルマネジャーの役割・責任範囲が大きくなり、会社都合でのローテーションがなくなれば、ミドルマネジャーにとって、戦略立案力の重要性は変わってくる気がする。(そうなると、ちゃんと学ばないといけない動機になる)
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今日は、不要と思われる研修の受講経験が、研修へのイメージを低下させていくという主旨のお話でした。
研修に対する印象が否定的になる要因や背景について、皆さんのご意見があれば、是非教えていただきたいです。いかがでしょうか?
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